ブログ/シャドーイングで「話せるようになる」は半分ウソ——研究が示す本当の効果

シャドーイングで「話せるようになる」は半分ウソ——研究が示す本当の効果

·AIで英語 編集部

シリーズ: 学習法エビデンス事典シャドーイングリスニング

「シャドーイングを毎日やっています。3ヶ月続けているのに、会話になると相変わらず言葉が出ないんです。やり方が悪いんでしょうか」

——やり方は、悪くないかもしれません。期待する効果の向きが、研究が示す効果の向きとずれているだけです。

シャドーイングは「発話する訓練」なので、スピーキングに効くと思われがちです。書店の学習本にも「シャドーイングで話せるようになる」という見出しが並びます。しかし第二言語習得(SLA)研究が最も強く支持しているのは、別の効果です。この記事では、シャドーイングの「本当の効果」と、それを踏まえた正しい使い方を解説します。

研究が示す主効果は「リスニング」

シャドーイングとは、聞こえてくる音声を1〜2語遅れで影(shadow)のように追いかけて発話する訓練です。もともとは同時通訳者の養成で使われてきました。

この訓練の効果を検証してきた代表的な研究者が、門田修平氏と Yo Hamada氏です。Yo Hamada氏の2016年の研究(Language Teaching Research誌)は、シャドーイングを扱った一連の研究を検討し、シャドーイングが一貫して効果を示すのはリスニング力、特に音声知覚(音を言葉として処理する力)の向上であると報告しています。門田修平氏も、シャドーイングの効果の中核を「音声知覚の自動化」に置いています。

なぜリスニングに効くのか。シャドーイングでは、聞こえた音を即座に自分の口で再現しなければなりません。「なんとなく聞こえた」では追いかけられないので、音の連結・脱落・弱形といった英語特有の音の変化を、正確に知覚することを強制されます。この「正確に聞き取る訓練を、口を使ってやっている」のがシャドーイングの正体です。

では「話せるようになる」は嘘なのか

半分は本当で、半分は期待しすぎです。整理します。

本当の半分: シャドーイングは発音・リズム・イントネーション(プロソディ)を改善します。口が英語の音の形に慣れるので、「通じる発音」の土台はできます。また、音声知覚が自動化されると会話中に相手の発言を処理する余力が生まれ、会話全体が楽になります。この意味で、話すことを間接的に支えてはいます。

期待しすぎの半分: シャドーイングは「相手の言葉をそのまま繰り返す」訓練であって、自分の言いたいことを組み立てる訓練ではありません。会話で必要な「頭の中の日本語を英文にする」「言い方を選ぶ」という処理は、シャドーイング中には一度も発生しないのです。研究の観点でも、シャドーイングから自発的なスピーキング力への転移は、リスニングへの効果ほどには確立されていません。冒頭の「3ヶ月やったのに話せない」は、起きるべくして起きています。

正しい位置づけ: 「聞く力の訓練」として最強、「話す力」は別の訓練で

だとすれば、シャドーイングをやめるべきなのか——逆です。**「聞き取れるようになるための訓練」としては、これほど効率的な方法はなかなかありません。**位置づけを正すだけで、シャドーイングは裏切らない訓練になります。

やり方のポイントは3つです。

  1. 素材は「読めば完全に分かる」レベルで — 意味の分からない音声を追いかけても、音の再現ごっこにしかなりません。理解できる素材で、音と意味を結びつけながら追いかけます
  2. 聞き取れなかった箇所を特定してから追いかける — 先にスクリプトを見ずに聞き、どこが拾えないかを確認してからシャドーイングすると、訓練が「弱点の矯正」になります(ディクテーションとの併用が理想です)
  3. 自分の声を採点する — 追いかけて言えた「つもり」と、実際に言えているかは別物です。録音して聞き返すか、AIの発音採点を使うと、再現できていない音が客観的に分かります

そして、話す力そのものは「自分の言葉を組み立てる訓練」で鍛えます。役割を分けるとこうなります。

目的 訓練
聞き取る力・発音 シャドーイング+ディクテーション
言いたいことを瞬時に文にする 瞬間英作文
会話の実戦(やり取り・とっさの対応) ロールプレイ(会話練習)

「シャドーイングだけで話せるようになる」でも「シャドーイングは無意味」でもなく、適材適所——これが研究から導ける結論です。

まとめ: 効果の向きを合わせれば、努力は裏切らない

冒頭の「3ヶ月続けたのに話せない」人は、実はリスニング力が着実に伸びている可能性が高いのです。もったいないのは、測っていないから伸びに気づけないこと。そして、話す訓練を組み合わせていないことです。

「AIで英語」では、無料のレベル診断(5分)でリスニングとスピーキングを別々に測定できます。シャドーイング(AI発音採点つき)で聞く力を、AIロールプレイと瞬間英作文で話す力を——効果の向きに合わせた訓練を、AIが毎日組み合わせて提案します。あなたのシャドーイングの努力を、正しい向きで実らせてください。


参考文献: Hamada, Y. (2016). Shadowing: Who benefits and how? Uncovering a booming EFL teaching technique for listening comprehension. Language Teaching Research, 20(1). / 門田修平 (2019)『シャドーイング・音読と英語コミュニケーションの科学』コスモピア.

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