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駐在帯同の英語——病院・学校・買い物、生活場面の優先順位

·AIで英語 編集部

シリーズ: 場面別・締切型駐在帯同

駐在に帯同する家族にとって、最初に要るのはビジネス英語ではありません。要るのは病院・行政手続き・学校・住居といった「うまくいかなかったときの影響が大きい場面」の英語を、渡航前に用意しておくことです。生活の場面は状況の手がかりが濃いぶん、言葉が意味と結びつきやすい(Krashen 1985)。一方で、その場で一から文を組み立てようとすると処理が追いつきません。だから定型をそのまま持っていきます。効く条件は、場面の限定・定型の準備・本番前の反復の3つです。

渡航して3週目の夜、家族の一人が発熱します。救急の受付で、体温と、いつから始まったかと、これまでにかかった病気を英語で伝えなければならない——。半年やってきたビジネス英語の教材に、その場面の言葉は一つも載っていません。この記事では、生活場面の優先順位のつけ方を解説し、場面ごとの準備の手順を紹介します。

ビジネス英語の教材が、帯同生活で効かない理由

理由は3つあります。1つめは、語彙の領域がほとんど重ならないこと。会議やメールの英語と、薬局・保険・学区・賃貸契約の英語は、別の世界の言葉です。前者をどれだけ積んでも、後者の窓口では出てきません。

2つめは、相手の態度が違うこと。仕事の相手には、あなたに伝わるように言い直す動機があります。同じ案件を進める必要があるからです。行政の窓口や混んだ診察室に、その余裕はありません。相手は自然な速さで、こちらの事情に合わせずに話します。

3つめは、やり直しがきかないこと。会議で言い損ねたことは後からメールで補えます。処方薬の説明や、学校の提出期限や、契約書の条項は、その場で取り違えると後まで影響が残ります。

そして窓口で聞き取れないとき、原因はあなたの耳ではないことがほとんどです。この点は聞き取れないのは耳のせいではないで詳しく扱っています。準備すべきなのは耳ではなく、場面ごとの言葉のほうです。

優先順位は「やり直しがきかない順」に

出発前に生活英語のすべてを準備することはできません。順番をつけます。基準は「うまくいかなかったときに、どれだけ取り返しがつくか」です。

第1層は、病院・行政手続き・学校・住居契約。ここは一度の取り違えが後まで残ります。第2層は、銀行の日常的な操作、公共交通、買い物。ここは失敗しても翌日にやり直せます。第3層は、近所づきあいや保護者同士の雑談。大事ではありますが、急ぎではありません。時間が足りないときに削るのは、下の層からです。

もう一つ、出発前に決めておいたほうがいいことがあります。どの場面を家族の誰が担当するか、です。就労する側と帯同する側のどちらが平日の病院に行くのか、学校とのやり取りは誰が窓口になるのか。これは家庭ごとに違いますし、性別でも役割でも自動的には決まりません。決めないまま渡航すると、当日その場にいた人が、準備していない場面に立たされます。

担当が決まれば、準備すべき場面も人ごとに変わります。全員が同じ教材をやる必要はありません。

場面が具体的なほど、言葉は入りやすい

Krashen (1985) は、学習者が意味を理解できる形で言語に触れることを、習得の中心に置きました。生活の場面がこの点で有利なのは、文脈が濃いからです。診察室で体温計を渡されながら聞く一言、レジで金額を示されながら聞く一言。知らない語が混ざっていても、状況が意味を支えてくれます。教材の音声より、目の前の場面のほうが理解しやすいことは珍しくありません。

ただし、聞いて分かることと、こちらから言えることは別です。ここで役に立つのが、定型表現をひとかたまりのまま持っておくという方法です。Skehan (1998) は、こうしたまとまった表現が使えると、その場で一から組み立てる負担が減り、空いた注意を別のことに回せると論じています。受付で「予約はしていません」「保険はこれです」を組み立てながら言うのと、そのまま出すのとでは、余裕がまるで違います。余った注意は、相手の返答を聞くほうに使えます。

そして、その定型は本番の前に一度使っておきます。Bygate (2001) は、同じ話す課題を繰り返すと、産出される言語とその制御のされ方が変わることを報告しています。一度目に内容を考えるだけで終わってしまったものが、二度目以降は言い方に手が回るようになる。だから、渡航前に同じ場面を声に出して何度か通しておく価値があります。頭のなかで確認するのではなく、口に出すことがポイントです。この考え方は瞬間英作文と手続き化とも共通しています。

準備の前に、家族それぞれの現在地を

同じ家庭のなかでも、英語の得意不得意は人によって違います。読めるけれど聞き取れない人、単語は知っているのに口から出ない人。同じ教材を全員に配ると、たいてい誰かには重すぎて、誰かには軽すぎます。

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参考文献: Krashen, S. (1985). The Input Hypothesis: Issues and Implications. Longman. / Skehan, P. (1998). A Cognitive Approach to Language Learning. Oxford University Press. / Bygate, M. (2001). Effects of task repetition on the structure and control of oral language.

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